2009年04月09日

タイムスリップ

「こちらです、先生」
 急な階段を登りきると、右手に見えるドアを示し、女は言った。
 資料によれば、女は今、四十九歳のはずだった。が、その姿はまるで老女のようであった。その表情は疲れきっており、活力というものがまったく感じられなかった。
 女は病んでいる。女の診療をしている彼は、そのことを十分過ぎるほど理解していた。しかし、それでもなお、女のやつれ方は異様だった。

 女が初めて彼の営む診療内科を訪れたのは、半年ほど前のことだった。症状を聞いて、彼は「鬱病」という診断を下した。
 その後治療を続け、さまざまな薬を処方した。が、女は一向に回復する様子を見せなかった。心の病気というのは複雑だ。決してあせってはならない。彼は自分にそう言い聞かせ、気長に女の治療を続けた。
 その甲斐があってか、先日、女は心の中にしまい続けてきた悩みを打ち明けてくれた。
 女の息子は長期の引きこもりだった。高校に入学してしばらく経った頃からなので、かれこれ十年になる。その間、ほとんど家から出ていないということだった。
 女と息子は母子家庭であった。相談できる相手などは誰もいないらしい。
 一年ほど前のことだった。女は息子を病院に連れていく決意をした。が、これはとんでもない失敗に終わった。女が病院に行くよう説得すると、息子は激しく取り乱し、その後一切部屋から出なくなった。トイレや食事の時間でさえもだ。
 女は後悔し、自身を責め続けた。いつしか精神に異常をきたしてしまった。そして彼の診療内科を訪れることとなった。息子に通わせようとした病院に、母親が通うことになるとは何とも皮肉な話である。

「ここから先は私にまかせてください」
 彼は言った。女はもどかしそうな顔をしながらも、素直に従った。
「失礼します」
 彼は注意を払いながら息子の部屋に踏み入った。
 空気が澱んでいた。机の棚には高校時代の教科書が並んでいた。ハンガーには学生服が掛かっていた。パソコンもDVDもなかった。その空間は十年間の時の歩を忘れたかのようだった。
 いや、よく見るとそうではなかった。時計はときを刻んでいたし、カレンダーの年度も変わっていた。確かに時は流れていた。
 息子はベッドに横たわっていた。頭から布団をかぶっていたので顔は見えないが、そのふくらみが存在を主張していた。
「こんにちは」
 彼は息子に声をかけた。

 彼が部屋から出ると、女がすがりつくように聞いてきた。
「先生、どうでしたか」
「すいません。しばらく外に出てきます」
 彼はそう女に告げると、絡み付くような視線を背中に感じながら、玄関へ向かった。

 外に出ると彼は携帯電話を取り出した。
 番号を入力しながら、女が息子を病院へ連れて行こうとしたときの顛末を思いだし、鼓動が高鳴った。

「……一年ほど経過していると思われます。胸に出刃包丁が……」
【ヒキ的小説の最新記事】
posted by hermit at 12:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ヒキ的小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

お詫び

 内容の不備を解消できなかったため、レンタルショップ小説)は中止させて頂きます。もし読んで頂いている方がおられましたら、申し訳ございません。
posted by hermit at 10:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月30日

大惨事?

今日はお陽さまぽっかぽか
わたしはうきうきした気持ちで外へ出る
小鳥のさえずりが聞こえる
わたしにも羽があったらいいのにな


これ、荒れまくってる掲示板に書き込んだら、どれくらいの惨事になるかな?
posted by hermit at 17:10| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

不治の病(6)

 僕はその日以降、限りなく無機質な部屋の中で、限りなく外界との交わりを断った生活を送っている。あらゆる刺激を排除した、いわば究極の引きこもり生活だ。
 この生活を初めてから三日ほどすると、夢を見るようになった。僕は毎晩夢の中で、二次元世界の住人となる。その世界はいわばユートピアで、僕は至福の時間を過ごす。しかし夢はやはり夢でしかない。いつか必ず醒める。眠りから醒めたときに突き付けられる現実が、僕をひどく虚しい気持ちにさせる。何もかもがどうでもいい、そんなふうに思えてくる。僕はその度に折れそうな心を奮い立たせる。
(あきらめてはいけない。弱い自分に負けてはいけない)
毎日そんなことの繰り返しだ。我ながら良く頑張っていると思う。僕はこれまで自分のことを、他の誰よりも弱い人間だと思ってきた。しかし最近の僕を見ると、僕のなかにもある種の強さが隠れていたようだ。
 そんな状態がしばらく続いた後のある日、いつもの部屋の中で僕は背後に気配を感じて振り返った。そこには美少女が立っていて、僕に微笑みかけてきた。しかし僕以外この部屋に誰もいるはずはない。僕は理性的になるよう自分を叱咤した。するといつの間にか美少女は消えていた。
 それから二日後、今度は部屋の中で一人苦しみに耐える僕の耳に、心地よい声が響いてきた。
「hermitさん」
声がした方に目を向けると、先日の美少女が立っていた。
「お久しぶり」
本当にかわいらしい、なんともやすらぎを与えてくれる声だ。僕は美少女に心を委ねてしまいそうになる自分を、必死に理性で引き留めた。それに何とか成功したことを認識したときには、前回と同じように美少女は消えていた。
 その後美少女は定期的に姿を表した。そして日が経つにつれて、その間隔はどんどん狭まっていった。

 僕は今、診療内科待合室にいる。周りの人からは、僕が一人で椅子に座っているように見えるに違いない。しかし僕の視界の隅は、隣に並んで座る美少女の姿をたしかにとらえている。今ではその美少女は消えることはない。いついかなるときも僕の側を離れることはない。

 診察室の中で僕が医師に今の状況を説明している間も、美少女は僕の隣に佇んでいた。
「hermitさんには今もその美少女が見えている訳ですね」
「はい」
僕が答えると、医師は苦汁の表情を浮かべて僕から視線をそらした。再び僕に視線を向けたとき、その顔からは覇気がまったく失われていた。
「二次元妄想の侵蝕が起きています。これは三次元の現実世界と、二次元の萌え世界の区別が曖昧になってしまう状態をいいます」
抑揚のない声で医師は僕にそう伝えた。僕は医師の様子に強い不安を感じた。
「良くなるんですよね?」
僕の問いに対し、医師は静かに首を横に振った。
「ここまで症状が進んでしまっては、もう一般社会で生活いくことは不可能です。残念ながらhermitさんはこれから先、萌え社会の中で生きていくよりありません」
僕は医師のその言葉を聞いたとき、僕と一般社会とを結ぶ鎖の最後の一本が、ついに切れてしまったことを理解した。
 診療内科からの帰り道、県道の舗道を歩く僕の隣には、相変わらず美少女の姿があった。
(これからよろしく)
僕は美少女に、心の中でそう囁きかけた。
「こちらこそ」
美少女の姿がひときわその存在感を増した。それと同時に僕が今まで生きてきた世界が、希薄なものとなっていった。


ーー一年後ーー

 僕は列車の扉が開くと、通い慣れた駅のホームへ降りた。そしていつもと同じ改札を抜け、いつもと同じ出口へと向かった。
 駅の建物を抜けると、僕の眼前に見慣れた街並みが広がった。

ーーENDーー
posted by hermit at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 不治の病ーー小説ーー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月28日

不治の病(5)

 僕は診療内科の通院日に、僕の身に起こっている症状について医師に相談した。
「二次元フラッシュバックが起きていますね」と医師は僕に告げた。「これはふとしたきっかけによって、かつて経験した萌え体験が、そのときの感情をともなって頭のなかで再現される現象です。hermitさんには今後、より徹底した管理が必要となります」
 僕は今、自分としてはかなりストイックな生活をしているつもりである。しかし医師の説明によれば、さらなる萌え管理が必要のようだ。僕は今後を想像して憂鬱な気分になった。
「これから僕はどうしていけばいいのでしょうか」
「少しでも萌えにつながる可能性がある場所やものから、徹底して遠ざかることです。どんな小さな可能性も無視してはなりません。ほんの些細なきっかけでも、それが連想を呼び、二次元フラッシュバックをおこす引き金となり得ます」
医師はそこで一旦言葉を切り、何かを考えている表情を浮かべた。
「hermitさんは先ほど、道行く女性が二次元の美少女に見えたといっておりましたね。それなどがいい例です。このときhermitさんの頭の中では、女性の大きな目やセーラー服が引き金となって、かつて目の大きな女性やセーラー服の少女によってもたらされた萌え体験が再現されているのです」
(なるほどな)
僕は説明を聞いて、霧が晴れた気がした。
「しかし少しでも萌えにつながる可能性のあるものを完全に排除するとなると、大変そうですね」
「その通りです。二次元フラッシュバックの症状をコントロールできるようになるまでは、一切の妥協を許してはなりません」
医師は厳しい口調でそう言い放った。
posted by hermit at 17:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 不治の病ーー小説ーー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月27日

不治の病(4)

 僕は悩んだ挙げ句、一つ目の方法ーー日常生活から萌えを排除する方法を選択することにした。引きこもりである僕は、これまでずっと一般社会から半分離脱したような生活を送ってきた。これから先も、器用に生きていくことはできないだろう。しかしそんな僕でもどこかに未練があるようで、一般社会と完全に決別してしまうことには抵抗があった。
 医師から説明を受けていたので覚悟はしていたが、実際体験してみると、二次元依存症の禁断症状は、それはそれは凄まじいものだった。麻薬や覚醒剤をやめられない人は、きっと今の僕のような苦しみを味わっているのだろうと想像したりもした。
 さらに二次元依存症の禁断症状の恐ろしい点は、日を追うごとに禁断症状が強まっていくということである。アルコールやタバコなどを絶った場合には、初期の段階で禁断症状はそのピークをむかえ、日が経つにつれて鎮静化する。しかし二次元依存症の場合は逆なのである。そのため強まる禁断症状と闘うために、たゆまぬ意志の強化が必要となる。ほんとうにつらい闘いなのだ。
 萌えを絶ってからしばらくすると、僕の身に奇妙な症状が出始めた。本屋に入ると自分の意志とは無関係に、萌え漫画やラノベのコーナーへ足が向くようになった。まるで磁石の側におかれた鉄釘のように、自然と吸い寄せられてしまうのである。また街の中で目の大きな女の子やセーラー服姿の女の子を見掛けると、ふと二次元世界の美少女に見えてしまうことがあったりもした。
posted by hermit at 15:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 不治の病ーー小説ーー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月26日

不治の病(3)

「hermitさん。診察室にお入りください」
その声を聞いて僕の心臓の鼓動が急速に速まる。僕は必死に平静を装いながら診察室に入っていった。
「どうぞかけて下さい」
白衣を着た男が僕に椅子をすすめる。五十歳前後だろうか。眼鏡をかけた小柄な男で、いかにも真面目そうな雰囲気だ。僕が椅子に座ると、医師は受付時に僕が記入した問診表に目を通しながら口を開いた。
「hermitさんは慢性的な引きこもり状態にあり、一ヶ月前から精神状態が悪化し、本日、当クリニックを訪れたということでよろしいですね」
「はい」
「精神状態の悪化とは、具体的にどのような症状が出ているのでしょうか?」
インターネットから離れることができません。離れると異常なまでの焦燥感にかられてしまいます」
「インターネット中毒のようですね。インターネットでは主にどのようなページを観ていますか?」
「ほぼ100%萌え画像、萌え小説、萌え動画といった萌えコンテンツのページです」
僕がそのように答えると、医師の目が一瞬鋭くなった。
「hermitさんには二次元依存症の疑いがあります。これから診断テストを受けてもらいます」
 それから十分ほどの間、医師は僕にいくつもの質問を投げかけてきた。僕は悩みながら、その質問に正直に答えていった。
「hermitさんは二次元依存症です。間違いありません。症状もかなり進行しているようです」
医師がけわしい顔でいった。どうやら僕の症状はかなり深刻のようだ。
「どうすれば治るのでしょうか」
「残念ながら今の医療技術では、この病気を治療することはできません。この病気を発症してしまった場合には、この病気を受け入れつつ、そのうえで自分自身にとってもっともQOLが高くなるような方法をとっていくしかありません」
僕は医師のそのような説明を聞いて、暗い気持ちになった。
「現在用いられている主な方法は次の二つです。一つ目は、日常生活から萌えコンテンツを徹底的に排除する方法です。この方法の場合、成功すれば一般社会から逸脱することなく生活していくことも可能です。ただしこの方法を用いた場合、今後激しい禁断症状と闘い続けなくてはなりません」
医師はここまで説明すると、いったん言葉をきった。確認を求めているのだろうか?僕はとりあえず軽く頷いておいた。
「二つ目は、一般社会から離脱し、同じ病気をかかえている人達の集団の中に生活の場を求める方法です。現在東京秋葉原に、二次元依存症をかかえる人達のための特別地区があります。この方法をとった場合、今後その地に生活の中心を置くことになります」
どうやら僕は選択をせまられているようだ。どちらがいいのだろうか。
「僕の症状の場合、どちらの方法をとるのがいいのでしょうか」
「それは何ともいえません。hermitさん自身がよく考えて決断してください」
posted by hermit at 17:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 不治の病ーー小説ーー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月25日

不治の病(2)

 僕が引きこもりになったのは、中学に入学してしばらく経った頃からだった。それ以前も心の中は引きこもりのようなものだったが、一様学校には通っていたので、社会的な体裁だけは繕われていた。
 引きこもりになったきっかけは、同級生からのいじめだった。原因は今だにわからない。僕がある日学校へ行くと、誰も口を聞いてくれなくなっていた。いわゆるしかとだ。その日以降、学校という社会の中での僕の居場所はなくなった。僕はそのときまでは、しかとといういじめを軽くみていた。暴力を伴ういじめからみれば、ぜんぜんたいしたものではないと考えていた。しかし実際は違った。暴力によるいじめの場合、たとえそれがどんなに消極的なものであれ、抵抗する術がある。しかししかとの場合、抵抗のしようがない。このいじめを受けたものにできることといえば、成行きを見守ることぐらいである。人間にとって、何もできないことほどつらい事はない。しばらくの間はどうにか耐えていたが、ある日とうとう耐え切れなくなって、僕は学校へ行かなくなった。その日以降ずっと、僕は引きこもり続けている。ほとんどの時間を家の自室の中だけで過ごしている。外に出るのは本屋に行くときぐらいだ(本屋に行けるということで厳密には引きこもりではなく準引きこもりであるが、ここでは引きこもりという言葉を使うことにする)
 引きこもりになってからというもの、僕は常に不安や焦りといった感情にとらわれていた。それらは年齢を重ねるにしたがって、ますます強くなっていった。しかし一ヶ月前までは、ぎりぎりのところで精神が破綻するのをまぬがれていた。
posted by hermit at 12:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 不治の病ーー小説ーー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月24日

不治の病(1)

 診療内科の待合室。僕は緊張しながら自分の名が呼ばれるのを待っていた。今のところ待合室にいる人間は、僕を含めて三人だ。僕の座る椅子の前方では、若い男が所在無げに辺りを見回している。その風貌から推測すると、僕より少し下ぐらいの年齢のようだ。大学生だろうか。その落ち着かない様子からみると、彼も僕と同様に今日が初診であるに違いない。僕の右前方、入口から一番遠い場所では、中年の女性が本を読んでいる。彼女は僕らとは対照的に落ち着きはらっている。いかにもこのクリニックの常連といった感じだ。
 ガチャッ。ドアが開く音がした。僕は入口の方に視線を向ける。クリニックの入口には、少年ーーといっても高校生ぐらいだろうかーーとその母親と思われる女性の姿があった。二人は脱いだ靴を下駄箱に入れ、スリッパに履きかえた。そして受け付けに置いてあるBOXに保険証を入れ、問診表に記入し、僕の隣に腰を下ろした。その間、少年はずっとおどおどしていた。なんとなく僕と似た匂いを感じる。僕と同じ引きこもりなのかもしれない。
posted by hermit at 12:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 不治の病ーー小説ーー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月22日

ーー小学生時代ーー

「今日はみなさんの将来なりたいものについて、作文を書いてもらいます」
先生はそう言うと、原稿用紙を配りはじめた。
 僕はどんよりとした気分で、前から流れてくる原稿用紙の束を受け取り、そのうちの一枚をとって、残りを後ろに回した。僕はどうも作文が苦手だ。いや作文だけではない。自分の考えを表に出さなくてはならないことは、すべて苦手だ。
 数分後、周りのクラスメイト達は、みんな何かを書きはじめている。しかし僕の原稿用紙は、今だ白紙のままだ。
(僕は動物や植物が好きだから、動物博士や植物博士はどうだろうか?)
僕は慌ててその考えを振り払う。
(だめだだめだ。僕みたいな馬鹿が博士になりたいなんて書いたら、おかしいと思われるに決まっている)
僕は再び考える。
(そうだ、冒険家なんかどうだろうか? 誰もいったことのない場所に行くなんて、考えただけでわくわくする)
(いや、それもだめだ。弱虫の僕が冒険家になりたいだなんて、みんなに知られたら絶対笑われる)
悩み続ける僕とは対照的に、クラスメイト達の原稿用紙はどんどん埋まっていく。
(どうしよう、どうしよう…… はやく何かを書かなくては)

「ではこれから、みなさんが書いてくれた作文の発表をしていきます」
先生はそう言うと、集めた原稿用紙の束に視線を落とした。
「じゃあ、まずは大山君の作文です」
先生が大山くんの作文を読み上げていく。読み終わると、口元になつかしそうな笑顔を浮かべて、大山君に話しかけた。
「大山君はF1ドライバーになりたいんだ。そういえば大山君、車のこと大好きだもんね。でも怪我はしないように気をつけてね」
先生が原稿用紙の束をめくる。
「次は坂井さんの作文です」
先生は坂井さんの作文を読み上げると、大山くんのときと同じように、なつかしそうな笑顔を浮かべた。
「坂井さんはデザイナーになりたいんだ。坂井さん絵が上手だもんね。坂井さんがデザイナーになったら、先生にも作品みせてね」
 その後先生は、次々と作文を読み上げていった。そしてその度に、なつかしそうな笑顔を浮かべていた。
「じゃあ、次はhermit君の作文です」
ついに僕の番がきた。僕はどきどきしながら、先生が作文を読みあげるのを聞いた。
「hermit君は普通の会社員になりたいんだ。ちょっと夢がないかな。子供なんだから、もっと夢をもとうね」
そう僕に話しかける先生の顔には、あのなつかしそうな笑顔はなかった。


ーー現在ーー

 僕は今日もいつもの部屋で、パソコンモニターを見つめている。この殺風景な部屋だけが、今の僕にとっての世界だ。そういえば昨日夢をみた。夢の中の僕は、会社員として社会の中に溶けこんでいた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ここ何日か気持ちが沈んでいるので、気晴しに小説を書いてみました。余計欝になりました。
posted by hermit at 08:17| Comment(4) | TrackBack(0) | ヒキ的小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。